お燗で増す日本酒の魅力!龍勢を温度を変えて飲んでみた。

わたしの家飲みスタイル
お燗で増す日本酒の魅力!龍勢を温度を変えて飲んでみた。
佐藤 裕子

蔵よし有楽町店 女将

佐藤 裕子

日本酒大好き女将のひろこです。今日のテーマは「お燗酒」という事で、ひとつの酒を温度を変えながら、どれだけ楽しめるか検証します。

今日は「龍勢」の雄町熟成純米

龍勢は、広島県の藤井酒造が造る酒です。今日のお酒は、酒米「雄町」を使い、精米歩合65%の純米酒。そしてなんとなんと2017年に醸造して熟成させてから瓶詰め、出荷されています。約3年物ですね。雄町・純米・熟成、この言葉だけで幸せな気分になってしまうのは、私が日本酒おたくだからでしょうか。

お燗は「熱燗」だけじゃない

お燗とひとくちに言っても、温度で色んな呼び方があるんですよね。日向燗(ひなたかん)とか人肌燗とか、あっつあつのは飛切燗(とびきりかん)と言いますね。とっても日本的で素敵な呼び方だなあと思います。今日は冷蔵庫から出して3時間くらい経って常温になったところから始めて、少しずつ温度を上げていきたいと思います! ではLet’sお燗!!

スタート:22.5℃

「常温」の状態です。酸味と渋味が混ざったような香りで、例えるならみかんの皮の香り。かんきつ系の落ち着いた香りです。口に含むとふわあーっと味わいが広がって、飲みこんだ後もじんわり甘味が残ります。甘く感じますね。

Step1:30℃(日向燗)

スタートの状態と比べてふくらみ感が増します。それから、じんわり残る味わいが柔らかになりました。人に例えるなら、ちょっと色気が増したような。いい味が出てきそうな期待させる味わいです。

Step2:38℃(人肌燗)

ファーストアタックが優しくなりました。杯を口に当てたら「つるっ」と入っていきます。温度が体温くらいだからそう感じたんでしょうか。味わいはまろやかさ増し増し、甘味は増しです。

Step3:43℃(ぬる燗)

43℃くらいの時は、酸味を感じました。さっきまでの柔らかさもあるんですが、その中に酸っぱさが入ってきます。だんだん違う顔が見えてきました。面白くなってきましたね!じんわりとした味わいの滞留時間が少なくなってきて、さっぱりとした後味になってきました。

Step4:47℃(上燗)

杯を顔に近づけた時に、グイっと飲むのに躊躇するくらいの温度です。酸味が尖ってきました。常温の時に甘い酒だと思っていたのが、この状態だったら辛口だねって言いたくなってしまうくらいの変わりようです。

Step5:52℃(熱燗)

角が取れたような飲み口になりました。アタックが優しく、人肌燗の時に感じたつるんと入っていく飲み口の良さを再び感じますが、つるんっと入ってきたその後は、さっきにも増してキレて辛いんです。あつあつのおでんと一緒に飲みたい、そんな感じです。

Step6:55℃(飛切燗)

徳利を持つ手がアチチとなるくらいです。ここで、カラメルみたいな甘い味が出てきたんです。えっ嘘、と言いたくなるくらいの変化です。さっきまで辛いと思っていたのに、、、変化がありすぎて自分の舌を疑いたくなります。

Step7:60℃

今まで感じなかった香りが出てきました。締め切った家の中の匂いみたいな、決して良い香りではなかったです。味わいは甘味も感じない代わりに旨味も感じなくなりました。どこかに行ってしまいました。

Step8:燗冷ましの45℃

温度を上げるのはここまでにして、「燗冷まし」に移行します。45℃はまろやかさもあって、甘味は凝縮したような甘さになりました。ぬる燗、上燗の時と比べて厚みのある甘味です。

Step10:燗冷ましの25℃

気が抜けたようになるのかな?と思って飲んだらしっかりと味わいがありました。旨味が引き出されていて、初めの状態と比べると甘味が減って渋味が少し強くなりました。燗冷ましと最初の状態を並べて出されたら、違う酒だと言ってしまうと思います。

お燗は奥が深い。

飲んでは温め、の繰り返しでしたが、ほんの5度の差で全く違う酒になるタイミングがありましたね。飛切燗のカラメルみたいな甘さがいちばんの衝撃。お燗は奥が深いなあ。今日の私の一番好みは「人肌燗」でした。優しくふくらみのある味わいが料理と合わせたくなりますね。お燗の時は、シンプルなメニューで飲みたくなります。カリカリに焼いた油揚げに醤油とネギ、茹で落花生、イカの塩辛をつまみながらユルユル飲みたいです。

今日もまた、日本酒の魅力に気づいてしまいました。

https://ienomi.tokyo/column/4799/

WRITERこの記事を書いた人

佐藤 裕子

蔵よし有楽町店 女将

佐藤 裕子

日本酒バー「蔵よし有楽町店」女将。
趣味は飲み歩きとマラソン。日本酒の美味しさや楽しみ方をたくさんの人に伝えたいと思い、昨年は酒蔵巡りバスツアーや日本酒イベントの開催、お店のオリジナル日本酒の開発など実施しています。
銀行員時代には仕事の疲れをお酒を飲んでリセットしていたので、お店ではお客様... もっとみる