金賞受賞おめでとうインタビュー①【菊池酒造「燦然」】

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金賞受賞おめでとうインタビュー①【菊池酒造「燦然」】
家飲み編集部

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かつて千石船が行き交い、備中玉島港町として栄えた岡山県倉敷市玉島にある菊池酒造。“数多き酒の中にあって一段と輝く素晴らしい酒であるように”という願いから、「燦然」と名付けたお酒を醸しています。また10年ほど前からは、「奇跡のお酒」という銘柄の醸造もスタート。「奇跡のりんご」で知られる木村式自然栽培法で、肥料・農薬を使わずに栽培した雄町米を使うこの銘柄も、じわじわと人気を集めています。

蔵元杜氏・菊池東さんにインタビュー

そんな菊池酒造の「燦然」が、全国規模で開催される唯一の新酒鑑評会「令和2酒造年度全国新酒鑑評会」にて金賞を受賞。しかも今回が記念すべき10度目の受賞! ということで喜びの声を聞くべく、社長で杜氏の菊池東さんにインタビューさせていただきました。受賞の感想から、菊池酒造の酒造りに欠かせないモーツァルトの音楽のヒミツまで(!)、たっぷりとお届けします。

全国新酒鑑評会はクリアするべき条件

ー 10度目の金賞受賞、おめでとうございます! 感想を聞かせてください。
菊池:ホッとした、というのもあれですが、全国新酒鑑評会は本当に読めないんです。「今年は絶対にとれる!」と自信があった年でも落ちてしまった年もあったので、そういう意味で今年も頂くことができて安堵したという気持ちです。

ー 審査基準にもトレンドのようなものがあるんですか?
菊池:あるんです。「燦然」は香りの良いお酒なのですが、一時期、香りが強いお酒が評価されづらい年が続いたことがありました。それで香りを落としたものを造ってみたけれど、どうも納得のいく味わいにならない。それならば、へんに鑑評会に合わせるのではなく、自分が思う「燦然」らしいお酒を造ろうと専念してきました。その間にまた審査基準も変化してきて、近年はほどよく香りがあるものが評価されるようになってきています。

ー 菊池さんにとって全国新酒鑑評会はどんな意味を持つのでしょうか?
菊池:一つのクリアしなくてはならない条件だと考えています。よほど有名な蔵は最近出品されませんが、私は出品して審査していただくことが自分たちにとって良いと思っている。金賞がとれたら自分の酒造りは間違っていなかったと思えるし、逆に受賞できなかったら何が悪かったのだろうと考えるきっかけになります。国内外に様々な賞がありますが、全国(新酒鑑評会)はやはり特別です。

金賞を受賞した「燦然(さんぜん) 大吟醸 原酒 山田錦 35磨」

モーツァルトを聴かせる酒造り

ー 菊池さんは音楽家でもあり、醪にモーツァルトを聴かせているとの噂を耳にしたのですが、詳しく聞きたいです!
菊池:科学的な根拠はないですが、モーツァルト効果は大きいと私は思っています。昔、高校生が実験したところ、モーツァルトの曲を流していると酵母の死滅率が少なくなるという実験結果が得られたんです。お酒というのは搾るタイミングを見極めることがとても重要なんです。搾るのが遅すぎると酵母が死んでしまって嫌な香りがしますし、早すぎると中途半端な味わいになる。やっぱりきちんと完熟したお酒に仕上げたいわけです。搾る直前までしっかりと酵母を生かしておくために、モーツァルトの効果があればうれしいなと思います。

 モーツァルトの音楽には、生命力をみなぎらせるような力があると。
菊池:モーツァルトの音楽はなんというか、自然の流れを感じる気持ちの良い要素がたくさん詰まっているので、人間にも効果があるんじゃないでしょうか。みんなモーツァルトを聴かせたらいいと思います(笑)。

杜氏が本当に造りたいお酒

ー 「燦然」というお酒は造り手からみると、どんなお酒だと表現できますか?
菊池:大吟醸系は香りが華やかでキメが細かく、よくお客様からは「教科書に出てきそうな大吟醸だね」と言われます。香りは厳密に味ではないですが、味の印象を左右するとても重要な要素だと思っています。”どんなお酒”というよりは、”どんなお酒を造りたいか”を大切にしています。

ー 菊池さんが造りたいお酒とは、どんなものなのでしょうか?
菊池:うちは香り系の高いお酒が多いのですが、自分が一番造りたいタイプは実は別であります。なんともいえない良い旨味を感じる、すっきりとキレの良い酒。これが思い通りにできなくて、過去に「これだ!」と思うものが出来たこともあるけれど、再現が難しい。なにかヒントがあると思いますが、それが見つけられないのが未熟です。

ー いつか菊池さんの理想のお酒が飲みたいです。ちなみに私は「奇跡のお酒」も好きです。
菊池:「奇跡のお酒」は特に女性からの人気が高いですね。もう取り組んで10年になりますが、確実に舌でわかる違いを感じでいただいていると思います。また今年はずっと造りたかったノンアルコールの「奇跡のお酒 麹あまざけ」をやっと世に出すことができました。高品質なお米なので少し値段は張りますが、飲めば納得していただける味になっていると思います。

家飲みはペアリングよりスタイルを楽しんで

ー いまコロナ禍で家飲みをされる方が多いと思います。菊池酒造のお酒をお家でどんな風に楽しんでほしいですか?

菊池:うちのお酒は食中酒なので、それぞれのご家庭の料理と一緒に楽しんでいただきたいです。日本酒は懐の大きいお酒なので、何でも合います。ただ岡山県の名物「サワラのたたき」はとても美味しく、日本酒にも合いますので機会があればぜひ食べてみてください。料理とのペアリングも良いですが、日本酒を飲むシーンをもっとおしゃれにしてみるのもいいなと思います。徳利とおちょこで飲む以外にも、四合瓶ボトルをそのままテーブルに置いて、お気に入りのグラスで飲むというようなスタイルもいい。みなさんらしく日本酒を楽しんでいただけたらうれしいです。

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お酒が大好きなライター、アーティスト、編集者、イベンター、フードジャーナリスト、リカーショップスタッフなどなど、お酒を愛して止まない「イエノミスタ」が結成した「家飲み編集部」。それぞれの家飲みの風景や、お酒のセレクト、おつまりレシピなどをご紹介します!... もっとみる