日本酒と和食のペアリング大検証 Part② 外国人編
日本酒を知ろう!エディター
家飲み編集部
今回は外国人編です。海外への日本酒の輸出量は10 年前に比べ 3 倍に増え、総額 222 億円を超えました(日本酒造組合中央会調べ)。第 1 位はアメリカで、次いで韓国、中国、台湾、香港となっており、なかでも中国の伸び率は 2 年前に比べ金額にして 248%増と顕著です。一方、訪日外国人の数も 2018 年に3000 万人を突破して 3119 万人となっています。訪日外国人の目的のトップは「和食を食べること」です。
そこで、前回と同じ日本酒と和食を用意して検証を行い、外国人はどのような嗜好を示すのか、また、欧米人とアジア人では評価の違いはあるのか等を探りました。
「テイスティングに使用した日本酒」
- 薫酒 出羽桜 純米吟醸酒(出羽桜酒造)
- 醇酒 大七純米生酛 CLASSIC(大七酒造)
- 爽酒 越乃景虎 超辛口 普通酒(諸橋酒造)
- 熟酒 人気一 特別純米酒 長期熟成酒1998年醸造(人気酒造)
日本酒の香味特性別分類(4タイプ)と 刺身から羊羹に至るまで和食7品を外国人12名が試す
今回のパネラーは、日本在住の外国人12名。欧米人は男女各3名で、国籍は米国、ギリシャ、イギリス、スイス。年齢は20〜50代です。アジア人も男女各3名で、中国、香港、台湾の出身。年齢は全員20代です。みなさんお酒(アルコール)を好み、ほどほどに強い人たちです。傾向として、欧米人が好んで飲むのは、ワイン、日本酒、ウイスキーの順で多く、アジア人は日本酒、ワイン、甘口カクテルの順でした。
「基本調査」好む日本酒について
自身の嗜好を明確化するために、香味特性別分類(4タイプ) を試飲し、好みの順に4~1点をつけた結果が右下の表です。 前回の日本酒ビギナーの日本人の結果と比較してみてください。
今回の外国人12名は、薫酒、爽酒、醇酒、熟酒の順に好んでいました。日本人ビギナーと同じ順位です。注目点としては、「日本人 と同様にフルーティーな香りを持つ日本酒を好む」「欧米人の醇酒 に対する評価が少し低い」、そして、「熟酒に対する評価が日本人ビギナーほど低くない」を挙げておきます。
日本酒、料理、相性に対するイメージなど
①日本酒のイメージとは?
欧米人は、「米のワインという印象」「亜硫酸を使用していない のが良い」「さまざまな温度で飲用できる」「日本文化の象徴」などとワインと比べてイメージしており、そのためか、日本酒のアルコール度数の高さが気になると答えた人も多かったです。一方、アジア人は、「高級感がある」、「米と水を原料として、これだけ違いがあるのがすごい」といった好イメージを持つとともに、「日本酒は他の酒類に比べて甘く感じる」という意見が多くみられました。
➡欧米人は日本酒をワインと比べて評価している!
➡アジア人は、日本酒は高級で甘い酒類という印象を持つ!
②好きな料理のジャンルは?
欧米人は西洋料理と同等に日本料理を好む傾向にあり、アジア 人は中国料理よりも日本料理を好む傾向にありました。
➡欧米人、アジア人ともに和食を非常に好んでいる!
③酒類と料理の組み合わせでイメージするものは?
欧米人、アジア人ともに、酒類と料理の組み合わせでイメージするものは、「肉料理と赤ワイン」「魚料理と白ワイン」でした(「日本酒と 寿司」がそれに続く)。
➡欧米人、アジア人ともに「肉料理と赤ワイン」や 「魚料理と白ワイン」のような組み合わせに慣れている!
④日本酒と料理の組み合わせでイメージするものは?
日本酒と合わせたいのは、圧倒的に「和食」とのこと。ただし、欧米人は「まだ具体的な組み合わせの経験が少ない」と答えていたことや、アジア人は「和食の中でも特に海鮮類と合わせたい」「濃厚な肉料理とも合わせたい」など、より具体的なイメージを持っていたことに注目です。
➡欧米人は、まだまだ和食と日本酒の組み合わせを経験したことが少ない!
➡アジア人は、より具体的な和食と日本酒の相性提案を望んでいる!
⑤お酒(&日本酒)を飲む際に料理との組み合わせを気にするか?
欧米人、アジア人ともに酒類との組み合わせは「割と気にする」人が多く、ただし、日本酒との組み合わせについては、アジア人のほうが気にしており、欧米人は、気にする人と、それほど気にしない人に分かれました。
➡酒類と料理の組み合わせは気にするが、日本酒との組み合わせに対する意見はマチマチ!
「日本酒と和食の相性大検証」
ここから行う相性検証では、好きと答えた日本酒のタイプ、好きでないと答えた日本酒のタイプが、料理との相性によって評価 が変わるのか。次に、好きな料理とそうでない料理でも変わるの か。または、日本酒に合うとイメージしていた和食も、実際に体験 すると評価が変わるのかなどを探っていきます。
なお、一つの料理に対して、4タイプすべての日本酒を試し、自身の嗜好により、◎、〇、△、×と、その理由を記入。以下の表は◎、〇と 答えた人の数を記載しています。
1.白身魚の薄造り(ポン酢+もみじおろし)
※この料理に対し欧米人は「全員が好む」、アジア人は「ほぼ全員が好む」傾向。結果 欧米人、アジア人ともに「爽酒」との相性を高く評価
●爽酒との相性が良いと感じた理由
欧米人:軽やか/双方の特徴が引き立つ/爽酒がより美味しく感じられた
アジア人:すっきり味わえる/ポン酢と合う/爽酒のドライ感が映える
★★★注目すべき点★★★
- 日本人ビギナーと比較すると、「薫酒」に対する評価がやや低 いこと(単独では薫酒を好む傾向にあったが、料理との組み合わせにおいては、薫酒の持つフルーティーな香りや甘味が合わ ないと感じる人が多かったよう。特にアジア人)。
2.マグロの刺身(ワサビ+醤油)
※料理は、欧米人、アジア人ともに「かなり好む」傾向。結果 欧米人、アジア人ともに「醇酒」との相性を 非常に高く評価
●醇酒との相性が良いと感じた理由
欧米人:ワサビの風味とよく合う/バランスが非常に良い
アジア人:醤油の味わいとよく合う/食べ進めるごとに相性の良さがわかってきた
★★★注目すべき点★★★
- 日本人ビギナーも日本酒とマグロとの相性を高く評価していたこと(マグロの刺身は、日本酒との相性訴求において有効な料理かもしれない。特に、外国人はワサビの風味が日本酒に合うと感じていたよう)。
- 日本人ビギナーは爽酒を最も評価していたが、外国人は醇酒を評価していた。
3.ワカメの酢の物(土佐酢+おろし生姜)
※料理に対し、欧米人は「おおむね好む」傾向、アジア人は好みが分かれた。 結果 欧米人、アジア人ともに「薫酒」との相性を高く評価
●薫酒との相性が良いと感じた理由
欧米人:双方を楽しめた/生姜の風味がポイント/フルーティーとスパイシーな組み合わせのおもしろさ
アジア人:爽やか/後味の心地良さ/ポン酢と合う
★★★注目すべき点★★★
- 日本人ビギナーより、外国人のほうが、この組み合わせを評価した(特に欧米人は、味覚上の相性だけでなく、ヘルシーな組み合わせなので良いと評価)。
- 薫酒のフルーティーさと、生姜のスパイシーさが合わさることで、新しい風味が生まれる組み合わせ、いわゆるマリアージュ的な相性の良さが評価されたよう。
4.鮭の塩焼き
※料理に対し、欧米人、アジア人ともに「おおむね好む」傾向。
結果 欧米人、アジア人ともに「薫酒」と「醇酒」の 相性を評価
●薫酒との相性が良いと感じた理由
欧米人、アジア人:薫酒のフルーティーさと、鮭の塩気の組み合わせがおもしろい
●醇酒との相性が良いと感じた理由
欧米人、アジア人:醇酒のコクや深みと、鮭の脂の旨さと塩気がマッチした
★★★注目すべき点★★★
- 薫酒のフルーティーさと、料理の塩気の組み合わせという意外性が評価された一方で、旨味やコクと同調する醇酒との組み合わせも評価された(日本酒と料理の相性評価が、多様であることがうかがえる)。
5.豚の角煮(和辛子)
※料理に対し、欧米人、アジア人ともに好みが分かれた。結果「爽酒」との組み合わせが高く評価された(特にアジア人)
●醇酒との相性が良いと感じた理由
欧米人:料理の甘味と爽酒のドライ感の組み合わせ/スパイシーすぎない後味
アジア人:後味がさっぱり/爽酒には脂を流す効果を感じる
★★★注目すべき点★★★
- 爽酒の「ウォッシュ・リセット効果※」が評価された(ワインと料理の組み合わせに慣れている人には、このウォッシュ・リセット効果が理解しやすいと思われる)。
- 他のタイプを上回るほどのポイントは得られなかったが、熟酒との評価が一番高い料理でもあった。「ナッツのようなフレーバーが生じた」、「非常に豊かな味わいに感じる組み合わせだった」などと評価されていた。
※料理の油脂成分を口内で洗い流す効果を「ウォッシュ」または「リセット」などと呼ぶ。白ワインの持つ酸味、赤ワインの持つ渋味、発泡性の酒類に含まれる炭酸ガス、日本酒に含まれる苦味または酒類そのものに含まれるアルコール成分などが、その効果を発揮する。
6.イカの塩辛
※料理に対し、欧米人、アジア人ともに好みは分かれ、「好きではない」と答える人も多かった。結果 アジア人は「爽酒」との組み合わせを高評価。欧米人はすべてのタイプの評価が低め
●爽酒との相性が良いと感じた理由
欧米人:独特の生臭さが緩和される
アジア人:料理の生臭みがおさえられた/爽やかな後味/料理が美味しく感じられた/双方が引き立った
日本酒との相性を好まない理由
欧米人:イカの塩辛が好きではないから/イカの塩辛は嫌いではないが風味が強すぎる/食感が合わない/ご飯のおかずに向いている
アジア人:イカの塩辛自体が苦手
★★★注目すべき点★★★
- 日本人ビギナーは、「酒と肴」の定番とも言える醇酒との組み合わせを評価していたが、イカの塩辛に慣れていない、またはあまり好まない外国人の場合は、すっきりとした爽酒を選択していたこと。
7.羊羹
※料理に対し、アジア人は「かなり好む」が、欧米人は好みが分 かれた。
結果 アジア人は「爽酒」との組み合わせを評価。 欧米人はすべてのタイプの評価が低め
●爽酒との相性が良いと感じた理由
アジア人:後味がさっぱり、口内がリセットされる/羊羹の甘味 が引き出され、より美味しく感じる
日本酒との相性を好まない理由
欧米人:酒の風味のほうが強い/アルコール感が際立つ/あんこ が苦手なので難しい
★★★注目すべき点★★★
- 「イカの塩辛」と同様、羊羹のような特殊な料理は、欧米人とアジア人で感じ方が異なるよう。欧米人はすべての日本酒との評 価が低めなのに対し、アジア人は爽酒との相性を高く評価。
「FBOもてなしびと2020年1月号」より引用
WRITERこの記事を書いた人
エディター
家飲み編集部
お酒が大好きなライター、アーティスト、編集者、イベンター、フードジャーナリスト、リカーショップスタッフなどなど、お酒を愛して止まない「イエノミスタ」が結成した「家飲み編集部」。それぞれの家飲みの風景や、お酒のセレクト、おつまりレシピなどをご紹介します!... もっとみる
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