日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI) 専務理事・事務局長
大森 清隆
そもそも、日本酒は数ある酒類の中でもすでに「完全」な状態になっているので、カクテルにすること自体、おこがましいと私的には思う。これまで、いろいろな方面、関係からレシピ提案を求められるたびに、「日本酒の良さを感じられ、そのまま飲むよりも美味しい」といったカクテルレシピ作成の基本を念頭に、あーだの、こーだの試行錯誤し提案してきたが、未だこの基本を超えるレシピの作成にはいたらない。
それもそのはず、「あー美味しい」とか「こーやって飲むのもありー」とか評価されたところで、提案者である私側に「そのまま飲むほうが美味しいけど、何なら…」という、そもそもの考えと「仕方ねーなー…」的な思いがあるからである。余談であるが、そもそも、どなたが日本酒カクテルを欲しているのかさえ、疑問に思う日々である。
今回も「仕方ねーなー…」と思いつつ…。「古来より伝わる‘たまご酒’は、カクテルでしょうか?」、「カクテルという言葉は似合わないが、紛れもなくカクテルでしょ」ということで、日本酒に赤や青のリキュール、はてまたジュースで割ったりするよりは、自分の中で許せる、あるいは、「これは完全に日本酒でなくてはならない」と思える「たまご酒」をご紹介する。
「たまご酒」とは、そもそも
アイ・オープナー、インディアン・サマー・ドリンク、エッグ・ビール、クリーミー・ドライバー、ゴールデン・フィズ、シルビア、ナイト・キャップ、ブロンクス・ゴールド、ポート・フリップ…、これらは全て玉子を材料に使うカクテルである。無論、そのベースは日本酒では無く、様々な酒類が使用される。世界各国には、玉子の生食習慣が無いにも関わらず、玉子を使ったカクテルが実に結構あるのである。
一方、日本の「たまご酒」といえば、江戸時代初期には、すでに作られており、江戸時代の代表的料理本のひとつである『料理物語』に「玉子をあけ、冷酒を少しずつ入れ、よくときて塩を少し入れ、燗をし出し候也。玉子一つに酒をりべ(織部杯)に三盃入るよし」と紹介されており、そもそも、民間療法のひとつとして飲み継がれてきたのである。
さて、民間療法のひとつとして飲み継がれてきたということは、たまご酒には何かしらの良い効果がある。多くの知識人がおっしゃるには、「酒が体を温めるから」とか、「玉子の豊富な栄養分が…」とか、さらには、肌をはじめ美容などにも良い効果があるなど、お褒めの言葉は多くとも、体への悪影響をおっしゃる方は見当たらない。察すれば、それ程までに、体感として効果があるがゆえに、江戸時代から、このたまご酒は民間療法として受け継がれて来たのであろうし、そこそこの成果をおさめて来たことがうかがえる。
また、このたまご酒は、何よりも美味しい。前述のとおり、日本酒は日本酒として飲むべきだと考える私も、このたまご酒だけは、唯一、日本酒のカクテルへの使用を認めざるを得ない味わいである。
◎たまご酒ならこのお酒
とろりとした濃醇な味わいが印象的の LINK
米の旨味と酸の高さが特徴、コクとキレのバランスが絶妙な TOUCH
家飲み「たまご酒」
たまご酒は、ふつう飲食店のメニューには無い。一部、商品化されているものもあるが、このたまご酒こそ、イエノミで自ら作って飲みたい。
いつ飲むのか、どうやって飲むのかに言及すれば、その日のお酒の「締め」がお薦め。よって、肴は必要無い。強いて言えば、欲したら塩昆布などをつまみながら楽しむのがお薦めだ。ちなみに、体調は、不調では無くてもよい…。
【「料理物語風たまご酒」の作り方】
全卵1個をよく溶き、常温の日本酒(純米酒が良い)30mlと良く混ぜる。塩をひとつまみ入れた後、50度程の湯で混ぜながら湯煎する。
【「甘口たまご酒」の作り方】
材料_ 常温の日本酒(純米酒が良い)30ml・全卵1個・砂糖
①日本酒30mlはあらかじめ煮切り、アルコール分を日本酒を煮切り冷ましておく
②全卵と砂糖を混ぜる
①と②を卵が凝固しないように混ぜながら温める
飛ばしておく(A)。全卵1個をよく溶き、好みの分量の砂糖と冷めた(A)を卵が凝固しないよう気を付けながら鍋で混ぜ合わせながら温める。
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日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI) 専務理事・事務局長
大森 清隆
都内ホテル勤務(レストランサービス)を経て、酒類輸出入卸売商社に勤務。
特に、清酒輸出卸売から現地輸入卸売までの一環事業を責任者として担当し、マーケティング・セールスプロモーション・取扱者教育の指揮を執った。
また、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会の理事を務めるかたわら、消費者が外観か... もっとみる
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