蔵の遺産・ヴィンテージ大吟醸酒で仕込んだ「富久長LEGACY 0 貴醸酒」
蔵元からの便り今田酒造本店 蔵元杜氏
今田 美穂
富久長の歴史が溶け込む貴醸酒
こんにちは。今田酒造本店の今田美穂です。
今回は私が少し特別な想いを込めて作った、宝物のような富久長をさせてください。
その前に少し、うちの酒蔵がある広島県・安芸津のお話をさせてくださいね。
広島杜氏の里 安芸津町
今田酒造本店は、穏やかな海と温暖な気候に恵まれた瀬戸内海に面した広島県安芸津町にあります。
明治時代、安芸津町の醸造家三浦仙三郎が発明した軟水醸造法。低温で醸したキメの細かい吟醸酒を生み出す醸造法は、現代の吟醸造りの礎となり、この地で広島杜氏によって代々受け継がれてきました。
酒蔵に遺していた大吟醸出品酒
先代の保広清孝杜氏が1990年に醸した、山田錦を使った袋吊り、斗瓶どりの大吟醸。新酒鑑評会に出品するために醸した酒は、広島杜氏が受け継いできた広島吟醸の技術そのもの。
熟成酒の市場がなかった時代に、原酒を瓶詰めして、瓶のまま蔵内の冷蔵庫で静かに寝かせていました。
限定690本。富久長ヴィンテージで貴醸酒をつくりました
約30年の時を経てもなお、透明感のあるピュアな輝きをまとった富久長ヴィンテージ。これを最先端の技術と融合させて醸造したのが「富久長LEGACY(レガシー ゼロ)貴醸酒」です。
貴醸酒というのは、三段仕込みの三段目の仕込み水の代わりに酒を使う贅沢なお酒。口に含むと、とろけるようななめらかな舌触りに、柔らかな甘やかさ。ヴィンテージの複雑味を引き出しながら、富久長らしいクリアで綺麗な味わいに仕上がりました。
大吟醸がまだ市販酒として一般に売られていなかった1990年代、毎年少しずつとっておいた大吟醸出品酒は、大切なお客さまのための蔵の秘蔵酒でした。この遺された富久長ヴィンテージで仕込んだ数量限定の680本。富久長の宝物のようなお酒に1本ずつ、シリアルナンバーとサインを記しました。
デッドストックの銀箔紙をラベルに使っています。
ラベルに使っている銀箔紙は、広島の歴清社で40年ほど前につくられたものです。和紙に銀箔を一枚ずつ張り合わせた職人による手仕事。ヴィンテージゆえに、一枚ずつ風合いが異なり、光の当たり方で表情も違って見えます。
江戸時代より金箔や銀箔の紙をつくる歴清社は、屋敷の屏風や襖に使われていた箔押しの伝統工芸技術を受け継ぎ、今ではインテリアや壁紙など、新たな文化を生み出しています。
古いものを古いままでなく、現代の技術で日本酒に新しい価値を創り出したい。ラベルにそんな私たちの思いを込めています。
日常のシーンを特別にする一杯です
熟成酒、貴醸酒というと食後酒のイメージですが、料理と合わせることをイメージして酒質設計しています。大事にしまっておくのではなく、日常の中の特別なシーンに料理と合わせてぜひどうぞ。
ワイングラスに注ぐと、冷たい温度からだんだん柔らかさが出てきます。その変化をゆっくりとお楽しみください。
今までの富久長にはない、新しい味わいが生まれ、富久長ヴィンテージに新たな価値をつくることができました。三浦仙三郎翁の座右の銘は「百試千改」。富久長はこれからもその情熱を伝統として引き継いで、新たな挑戦を続けていきます。
今田酒造本店 蔵元杜氏
今田美穂
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今田酒造本店 蔵元杜氏
今田 美穂
“質実剛健”の明治に憧れ、広島から上京。卒業後、百貨店勤務を経て1994年からは家業である今田酒造本店に。現在は、日本酒蔵元の経営者、杜氏として日本酒と共に日々を過ごす。
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