金賞受賞おめでとうインタビュー②【一宮酒造「石見銀山」】

わたしの家飲みスタイル 蔵元からの便り
金賞受賞おめでとうインタビュー②【一宮酒造「石見銀山」】
家飲み編集部

エディター

家飲み編集部

島根県・大田市で「石見銀山」や「理可」などの銘柄を醸す、一宮酒造。4年前から、蔵元三姉妹の次女・浅野理可さんが杜氏となり、夫の怜稀(さとき)さんと夫婦二人三脚で酒造りをしています。伝統を引き継ぎながら、若い感性で一宮酒造のお酒をアップデートしてきた二人がついに、「令和2酒造年度 全国新酒鑑評会」にて念願の金賞を受賞! ということで、この4年間の振り返りや受賞した「石見銀山」のことなど、夫婦そろってお話してくださいました。ナイスチームなお二人のインタビューをどうぞ。

何度も発表を見直しました。

― 理可さんが杜氏に就任されてから初の金賞受賞ということで、大変盛り上がったのではないでしょうか?
理可:はい。焼き肉に連れて行ってもらいました(笑)。本格的に2人で酒造りを始めてから今年で4年目なのですが、本当にまだまだペーペーなので、インターネットで発表を見た時は衝撃でしたね。金賞の蔵には☆が付いているんですが、本当にうちの蔵に付いてるか、何回も何回も見ました(笑)

― 本当におめでとうございます。全国新酒鑑評会への出品はこれまでもされていたんですか?
理可:15年間くらい出品していなかったんですが、酒質が良くなってきていたことと、旦那がずっと金賞を取りたいと言っていたので、昨年出品しました。昨年は入賞できたのですが、コロナウイルスの影響で金賞の選定自体がなかったので、今年はとれてよかったです。

― 全国新酒鑑評会は、酒蔵さんにとってやはり特別な賞なのでしょうか?
理可:県や中国地方だけの鑑評会もありますが、全国は歴史もありますし、日本中の蔵がこの賞をとるために頑張っておられる大きな賞なので、金賞を受賞する喜びも大きいですね。

― 怜稀さんはなぜ金賞が取りたかったんですか?
怜稀:やるからには形に残したいですし、最高の賞を目指したかったんです。販促に関しても、金賞を謳えることが力になると思いました。

理可:彼はもともと賞とか資格とか、形に残るものが好きなんです(笑)。私は賞を取ることに全く興味がなくて。でも今回金賞を頂いて、皆様からお祝いの言葉をかけてもらったり、市長さんに報告会をさせていただいたり、今朝は地元の新聞に取り上げていただいたりしているうちに、すごく意味のあることなんだなと感じました。

怜稀:そんな風に思ってたの?

理可:うん(笑)。ただ若いからとか、ビギナーズラックだと思われたくないので、来年も絶対にとらなくてはとドキドキしています。

夫婦二人三脚の酒造り

― お二人がとても仲良しで和みます…きっと酒造りでも良いチームなのでしょうね
理可:いいチームでしょ?
怜稀:お、おう。

― いい感じですね(笑)
理可:お互いタイプが違うけれど、補い合いながらやっています。旦那はトレンドをキャッチするのが得意だし、酒造りや温度管理にもすごく細かい。今回の受賞も旦那が言わなかったら挑戦していないだろうから、言う通りにして良かったです。喧嘩をすることもあるんですが、話さないと作業が進まないから話すじゃないですか。それでやっているうちに「あれ、さっきなんで怒ってたんだ?」となります(笑)。旦那はどう思っているかわかりませんが。

怜稀:僕もまったく同じことを思っています。

理可:本当に!?(笑)

― 怜稀さんは、若くして蔵を継いだ理可さんをカッコいいと思ったりしますか?
怜稀:本人を目の前に言うのはあれですが…高校の時には蔵を継ぐと言っていた姿を見ているので、すごいなと思っていました。自分が高校生の時は進路なんて考えていなかったので。でもいま本人に聞いてみると「あんまり深く考えてなかった」と言うんで、そんな感じだったの!?と拍子抜けですけれど(笑)。

全国展開を狙う新ブランドも考え中

― 今回受賞されたお酒もですが、「石見銀山」は造り手からみてどんなお酒だと表現しますか?
理可:「石見銀山」は歴史あるうちのメイン銘柄で、できるだけ多くの方に飲んでいただきたいと思っています。原料はずっと変えていませんが、味わいは杜氏によって変化しています。特別純米などの定番酒は変なクセがなく、キレが良くなるように麹造りを意識。今回金賞をいただいた大吟醸は本当にフルーティで優しい甘さがあり、キレも良くてグイグイ飲んでいただけるお酒です。6月中旬には出品酒を出荷しますので、ぜひ飲んでみてください!

― 個人的には旨味のある「理可」シリーズも好きです。
理可:うれしいです!私は食べることが大好きなので、「理可」のほうは食中酒として作っています。飯米を使ったりして、華やかさがあるお酒というよりは、料理を合わせて楽しんでもらえるお酒です。

怜稀:銘柄ごとのコンセプトをしっかりとお酒で表現して、「石見銀山」と「理可」それぞれの個性をより強くしていくことが今後の目標です。また、「石見銀山」は地元の世界遺産を冠にしたお酒を造っているので、お酒を通じて大田市を全国的に認知してもらえるように頑張っていきたいです。それから理可がもうすぐ31歳になるんですが、35歳になる年に一年限定で「理可35」というお酒を出したいなと思っています。

― おもしろいです(笑)。「理可35」は精米歩合35%ってことですか?
怜稀:そうですそうです。35%精米。「理可35」だけは必ず実現させたいですね。

理可:このあいだ思いついたアイデアで、気に入っているみたいです(笑)。あとは関東や全国に販路を持てるような、新ブランドの立ち上げもしたい。いい銘柄名をいま考え中です。時代に合った、ラベルも洗練されたものをイメージしています。私はデザインのセンスが皆無なので、ご一緒させていただけるデザイナーさんを探しています!

― これからの一宮酒造もすごく楽しみですね
理可:製造量を増やして上を目指せと言われたらそれまでなんですが、“私たち夫婦が造っている”ということがうちの持ち味だと思うので、設備を整えて誰でも造れるようになったら、ちょっと違うと思うんです。子供との時間も大事ですし、酒造りの時期とそれ以外はしっかりと分けたい。これまで通りできるだけ地元産の原料を使いながら、小仕込みで、自分たちらしい酒造りをしていけたらと思っています。

https://ienomi.tokyo/column/ichinomiya_gold/

WRITERこの記事を書いた人

家飲み編集部

エディター

家飲み編集部

お酒が大好きなライター、アーティスト、編集者、イベンター、フードジャーナリスト、リカーショップスタッフなどなど、お酒を愛して止まない「イエノミスタ」が結成した「家飲み編集部」。それぞれの家飲みの風景や、お酒のセレクト、おつまりレシピなどをご紹介します!... もっとみる